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デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会報告案に関する意見


Ⅰ コンテンツの流通促進方策について

コンテンツの流通促進方策について、推進しようとする姿勢については評価 するものである。しかし、現在の状況を見る限り検討の開始が遅すぎた感もある。 また、流通促進の問題は、(1)権利者が不明確であることだけでなく、(2)権利 者が従前のビジネスモデルに固執し権利処理を不当に拒否することも挙げられる。 現在検討されている、情報の整備や権利の集約化は、主に(1)の問題であり、(2)不 当拒否に対する方策も十分検討されたい。

特に権利の集約化を目指すことは望ましいが、同時に弊害もある。

例えば、また、現在では、映画の一部が法制度となっている。しかし、映画著作 物の範囲は判例上も明らかではなく、原著作物の処理としても音楽が含まれるの か?等、明確ではなく、あまり有効に機能していない。流通促進のためには、こ れらの範囲を明確にし、少なくとも商用コンテンツについては、映画著作物同様 の制度を一般に創設し、権利処理を一度で完了するように法制化するべきである。 また、権利の集約化については、権利の寡占状態による不当な取引拒否や、不当 に高額な許諾料の請求等が予想される。これらに対する十二分の対応をされたい。

Ⅱ 権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入について

フェアユースは、アメリカ等で規定されており、日本がこれまでフェアユー スが規定されていないことは非常に問題であった。利用者にとって、フェアユー ス規定の創設は待ち望んでいたことであり、一日も早く立法化されたい。

ただ、フェアユースに対しては、「著作物の性質」「利用の目的及び態様」 など具体的な考慮要素を掲げるべきとされているが、これらはいずれも「公正な 利用」の一要素であり、このような抽象的な要件を多数設けることは、裁判実務 上混乱を招くばかりか、法予測可能性を失わせ、フェアユースを死文化すること になる。また、権利者の強い意向により、無用な限定を設けること等があっては ならない。

フェアユースは、利用者の観点から利用しやすい制度とされたい。

Ⅲ-1 コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方について

技術的保護手段については、一定の保護のために強化する必要性は認めるが、 保護される範囲を拡張することについては慎重でなければならず、逆に許される 範囲についても明文化することが望ましい。

技術的保護手段は、過度に保護されれば技術的保護手段を名目に互換機能を 有する機器の販売を禁止することを許容することになる。

特にゲーム業界などでは、ゲーム機器メーカがソフトメーカを囲い込む傾向があ り、また、中古ゲームや攻略本について著作権侵害であると主張する等行きすぎ た保護を求める動きもある。このような現状で、安易な保護の範囲拡大は、自由 な競争を阻害し、不当に独占権を付与することになりかねない。 

また、技術的保護手段の保護は、刑事罰による保護がなされており、特に、機器 の開発者に萎縮的効果を与える可能性が高い。

Ⅲ-2 インターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方について

プロバイダ責任制限法を実効性あるようにすることは、緊急の問題であり早 急に着手されるべきである。また、プロバイダ責任制限法は刑事処罰に関する免 責を認めておらず、この点も早急に対応されるべきである。

プロバイダ等に対する著作権侵害の責任追及は、いわゆるカラオケ法理を拡大適 用する裁判例などにより実際上死文化に近い状態である。 米国では、DMCAによる保護によりYoutube等のサービスが隆盛化しており、日本 のISPは訴訟リスクからサービスに踏み出せないのが現状である。我が国著作権 法が国際競争力を減退させているという観点から、少なくとも米国と同等な保護 をISPは与えられたい。

Ⅲ-3 著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について

日本は、カラオケ法理の拡大適用により、アメリカで間接侵害が認められる範囲 以上に、直接の侵害者であると認定される状況となっている。

間接侵害とされる範囲について明確化することは賛成であるが、例えばアメリカ の間接侵害は、ソニー判決等によるセーフハーバー(責任を問われない範囲)を 前提にされており、我が国で明確化するには、非侵害的関与の範囲を設けるべき である。

また、間接侵害は、我が国では、一般に差し止め等の議論とされている。しかし、 日本の著作権法は非常に広汎な刑事罰規定を設けており、また、刑法上幇助が成 立するとされている範囲は非常に広い。

いわゆるWinny事件による逮捕・有罪判決が、ソフトウェア技術者に対して 与えた萎縮的効果は非常に大きく、多くのプロジェクトが中断し、また、優秀な 人材の国外流出が目立つようになっている。

刑事処罰に対しても、中立的な機器の提供は刑事処罰の対象外とするような適切 な対処を切に希望する。