1 5頁 中間まとめは、「我が国の裁判実務においては、個別権利制限規定の解釈等において、解釈上の工夫や民法の一般規定の活用等により、個別の事案に応じた妥当な解決が図られている実態が一定程度認められるものと考えられ、また、個別権利制限規定が常に厳格解釈され、それにより不合理な結論が現実に生じている実態にあるとは評価できないものと考えられる。」としているが、裁判官の我田引水と言わざるを得ない。また、引用されている裁判例も民事事件に終始している。民事事件であっても、実務全体として見れば、到底弾力的な解釈がなされているとは言えない状況である。特に、著作権法は刑事処罰が規定されており、裁判所による救済的な解釈が無き限り、有罪となるような法制度となっており、刑事裁判所がそのような解釈をする可能性は少ない。 実際に、形式的な画像のアップロードをもって著作権法違反を認定した事件(IBM事件、原田ウイルス事件)等、弾力的な解釈がされているというのは笑止である。中間とりまとめはフェアユースの議論の前提を誤っていると言わざるを得ない。 2 12頁 中間とりまとめは、米国著作権法に関する調査報告書について、非常に消極的な態度をとっているが、WGの資料を見る限り調査報告に対する批判ばかりであり、具体的な調査等が皆無である。外国の調査を批判するばかりではなく、調査するべきことについては自ら調査されたい。 3 16頁 中間とりまとめは、権利制限の一般規定を分類して検討されている。その上で形式的権利侵害行為と評価されるものにフェアユースの範囲を制限し、個別権利制限規定の解釈で解決可能性が有る利用の場合、特定の利用目的を持つ利用への対応や、パロディなどはフェアユースの対象から外すべきと思われる見解をのべているが、全く誤りである。 そのような非常に限定的なフェアユースは、従前の権利制限規定の解釈のような硬直的な解釈を生じるだけであり無意味である。フェアユース規定は個別包括的一般的な規定を設け、利用目的等はその中の解釈にすぎないとするべきである。アメリカで集積された裁判例を指針とすれば不当な結論は生じない。 4 28頁 著作権法は、10年以下の懲役という非常に重い処罰規定が設けられており、フェアユースについては刑事処罰との関係を慎重に検討するべきところ、中間とりまとめはこの点の検討が不足していると思われる。 刑事処罰については、フェアユースは処罰の範囲を限定するための規定であり、正当防衛同様それほど明確な要件を設けることは求められていない。現在では、ウイルス作者や情報漏洩者を逮捕するための便法として、著作権法違反が用いられている現状に鑑みても、また、刑事処罰が相当でない場合は様々な類型が考えられることからもフェアユース規定は一般的包括的な規定にするべきである。 これに対して、一部ではフェアユースは抽象的であり、罪刑法定主義違反であるとの主張がされているが、刑事処罰の範囲を限定するためであれば罪刑法的主義違反とはならない。 |
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